入居者トラブルの事前防止策

昨今、賃貸管理の依頼が非常に増えてきています。オーナーさんたちが投資物件を増やされるケースが多いからですが、同時にトラブルも増えているのが実情です。特に敷金返還や原状回復費用をめぐる争いが多く、場合によっては裁判沙汰になることもあります。

実は、これらのトラブルのほとんどは、契約段階での不備が原因なんです。国土交通省が公表している「原状回復ガイドライン」というのがあるのですが、多くのオーナーさんやさらには管理会社でもこれを詳しく読んでいない。その結果、「こんなのは修繕費で当然負担してもらう」と思っていたことが、実は法的には「通常損耗だから返さなくちゃならない」という判断になることもあるんです。


例えば、壁紙の日焼けやクロスの退色。これは、賃貸人(オーナー)が負担すべき通常損耗として扱われます。でも、タバコによるヤニ汚れや壁に穴が開いている場合は、賃借人の責任です。この区別が曖昧だと、後から揉めるんです。


私が見てきた実例の中に、こういうケースがありました。3年間住まわれた方が退去するとき、「エアコンのフィルター清掃は入居者の義務」と判断して、クリーニング代を敷金から差し引いたオーナーさんがいたんです。ところが、その方は裁判を起こして、「通常の使用範囲内の汚れであり、クリーニングは必要ない」と主張して、実際にそれが認められてしまったんです。


避けるべきもう一つの落とし穴は、「騒音」「異臭」といった入居者間のトラブルです。これは、物件管理の問題というより、人間関係の問題になってくるので、非常にデリケートです。片方の入居者から「となりの人が毎晩煩い」というクレームが来たとします。オーナーとしては、何とか対応したいと思うのですが、相手方に直接言うのは拗れる可能性があります。


こういうときは、管理会社を通じた適切な対応が重要です。つまり、「複数の入居者から同様の苦情が来ている」「賃貸


借契約で定められた『他の入居者に迷惑をかけない』という条項に抵触する可能性がある」という形で、慎重に対応することが大切なんです。


実は、借地借家法という法律は、借主をかなり手厚く保護しているんです。正当事由のない限り、賃貸人は賃借人を追い出せません。ですから、最初の契約段階で、しっかりとした約定を作っておくことが極めて重要になってくるわけです。


私の経験からアドバイスするなら、契約書には以下の項目を必ず明記してください。まず、敷金と違約金の区別を明確にすること。次に、原状回復の範囲を、できるだけ具体的に記載すること。三番目に、入居者が講じるべき維持管理義務(エアコンフィルターの清掃、壁紙の汚れを極力作らない等)を記載すること。四番目に、近隣に迷惑をかけてはいけないこと、特に生活音に関する配慮を明記することです。


また、入居時に「入居時点検報告書」という書類を作成し、備品やクロスの状態を細かく写真付きで記録しておくことも重要です。退去時に「ここは入居時から既にあった傷だ」という争いを避けるためです。


賃貸管理は、最初が肝心です。面倒だと思わず、きちんとした契約書と事前の文書化を心がけてください。それが、後のトラブル防止に繋がるんです。